[官能小説] 熟女の園 花と若葉 ~若き俳優と熟年女優の禁断の恋~
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花と若葉 ~若き俳優と熟年女優の禁断の恋~

「ぜひこの役を小百合さんにやっていただきたいと思っています。この役は小百合さためにあるようなもの、私はそう思っています」

 舞台の控室にやってきたその人は私にいそう言って資料を差し出してきました。それは新作映画の資料でした。私のもとにやってきたのは日本を代表する名監督で今度の作品に私を起用したいとわざわざ脚を運んでくれたのです。
 私、白鳥小百合は10代のころから役者をやってきてもう半世紀になろうとしています。国民的女優と呼ばれるようになり賞を頂いたことも何度もありました。日本を代表する女優だという人もいます。
多くの映画に出演して参りましたが今回は私にとって異色な作品でした。




「でもこの年になって恋愛映画のヒロインなんて・・ねえ」

「熟年女性と少年の禁断の恋がこの作品のコンセプトなんです。そしてそのヒロインである熟年女性のイメージにぴったりなのは小百合さんしかいません。可憐で清楚、国民的名女優である小百合さんしかいないんです」

 監督の熱意に負けて私は彼の次回作「花と若葉」に出演することにしました。
 とある地方の旅館の女将とその旅館にやってきた家出少年の淡い禁断恋模様を描いた作品です。撮影前から大々的な記者会見が行われ、マスコミの注目度は大変高い作品となりました。
 63になった私が恋愛藍画の主演を務めるということも注目度を高めた一因でした。
  ですが私にとってはそんなことは関係ありません。役者として与えらた役を演じきることしか頭にはありません。


「白鳥さんおはようございます」

 撮影初日、私を真っ先に出迎えたのは監督ではなく主役の前澤潤くんでした。今年で18歳、モデルや歌手としても活躍しついて今最も注目されている若手俳優です。その優れた容姿に世間の奥の女性がう魅了されています。

「おはよう前澤君。今日からよろしくおねがいします」

「いえ、こちらこそ白鳥さんと共演できて光栄です。どうぞよろしくお願いします」

 前澤君は深々と私に頭を下げました。実際に彼と会うのはこの日が初めてでしたが時折テレビで見た通りのとても礼儀正しく真面目な好青年なのだと分かりました。


 撮影は順調に進んでいきました。前澤君は若いものの演技には輝くものがありました。おそらく生まれ持った天性の才能があったでしょう。その上とても気が利いてスタッフや他の共演者からも大変可愛がられていました。

「白鳥さん、お茶をお持ちしました」

「ありがとう。でもこんなことまであなたがしなくてもいいのよ」

「いえ、いいんです。現場では僕が一番年下ですから先輩方のために動かないと」

 休憩のときには前澤君は私にお茶や差し入れを必ず持ってきてくれました。他の共演者よりも私のことを特に気にかけてくれているのは明白でした。

「前澤は白鳥さんのことが本当に好きなんだな。役じゃなくて本気で恋してるんじゃないのか?」

「ち、違いますよ。白鳥さんは大先輩ですから尊敬してるんです」

「じゃあ俺たちみたいな端役は尊敬されてないのか、がっかりだな」

「そんなことありませんって」

 などと他の共演者に茶化されることもしばしばありました。
 若くいかっこ良い前澤君に良くしてもらい私も決して悪い気はしませんでした。結婚をして還暦を過ぎたおばあさんではありますがそれでも男性に良くされると嬉しくなることはあるのです。
 その時は彼がただやさしいだけの若者だと思っていました。


 撮影中のある日、突然の大雨で撮影が中止となり大急ぎで撤収になりました。この日の出演者は私と前澤くんだけ、他のスタッフは機材の撤収に大慌てだったのでロケバスの中には私たち二人だけとなっていました。

「すごい雨ね。さっきまで晴れていたのに」

「そうですね。白鳥さんのさっきの演技、雨が降りださなければきっとOKだったのに」

「いいのよ。演技なんていくらでもやり直しができるから」

 私たちはロケバスの中で他愛もない話をしていました。外はまるで天地がひっくり返ったかのような大雨で一向に止む気配はありません。真っ黒な雲に空は覆われていました。その雲をぼんやりと見上げると突然眩い閃光が目の前に走り、大地を切り裂くような大きな音が響きました。

「きゃっ!」

 私は驚いてしまい両手で顔を覆って身を守ろうと反射的に身体が動きました。

「大丈夫ですか!」

 怯んだ途端に前澤くんがすかさず声をかけてくれました。見上げると前澤君の顔が目の前いっぱいに広がっています。彼は私を抱きしめていました。まるで私を守ろうとするかのように両手を広げてしっかりと私を抱いてくれています。

「ご、ごめんなさい。私ったら・・・雷につい驚いてしまって」

「いえ、いいんです。なにかあっても僕が一緒ですから」

 前澤君は私を抱きしめたまま離しませんでした。まだ17歳だというのに私を守ろうとしてくれる姿にドキドキししてしまいます。彼の腕に抱かれたまま離れようとは私はしませんでした。何度も雷鳴が鳴り響く中、抱かれていると共にいてくれる人がいて守ってもらっているのだという安心感がありました。

「いい年したおばさんがこんなみっともない姿見せてしまって恥ずかしいわ。前澤君も引いてしまうでしょ?」

「いいえ、白鳥さん。いつも冷静なのに雷に驚くなんてかわいいなって思いました」

「かわいい?」

「はい、白鳥さん・・・すごくかわいいです」

 私を真剣に見つめる彼の腕には力が入ってきました。かわいいなんて言われてすごく恥ずかしくて変な気分です。普段なら冗談と割り切って流しているところですが、この時の前澤君の雰囲気は尋常ではありませんでした。

「白鳥さんはすごくかわいいです。普段からずっと・・・だから僕はこの撮影中ずっと白鳥さんから目が離せなかったんです。白鳥さんがあまりにも綺麗でかわいすぎて」

「前澤・・・くん」

 真剣な表情を浮かべる前澤君に見入ってしまっていた私の唇に温かいものが触れました。それは若い果実のように新鮮でやわらかく、心地の良い温かみがありました。
 前澤君は私の唇を奪ったのです。決して冗談では済まされない行為、45歳も年下の共演者とプライベートでキスなんてどうすればよいのか頭が真っ白になってしまいます。
 その時間は永遠に続くかのよに長い間重ね合わせていました。そして満足したかのように前澤君は唇をゆっくりと離しました。

「すみません。急にこんなことしてしまって・・・忘れてください」

 前澤君は私を離すと反対方向を向いて黙り込みました。私からなんて声をかけていいのかわからずお互い何も言いませんでした。
 外では相変わらず雷が鳴り響いていましたがもう気にはなりません。


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